2010年12月24日

北京での仕事

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写真集「FLOW AND FUSION」の造本依頼をされた日から、写真家・北野謙との関係が始まった。
今年7月、北京の三影堂で開催された写真展のカタログの販売を明後日26日より開始します。
北野謙が詰まっています。テキストは、北京語、英語、日本語の3ヶ国語。
カタログに収められている北野謙の序文をここで。

三影堂撮影芸術中心での「our face」作品制作について

「our face」は一見一人のようだが、集団全員が重なった群像写真である。

この作品はアナログの1枚の銀塩印画紙に、ネガ1枚ずつから精密に微小の露光を人数分繰り返す気の長い手作業で制作する。通常東京の私の暗室では11×14インチの印画紙にしか制作できない。しかしコンセプトとしては、鑑賞者が鏡に向き合うような等身大がベストだと考える。

北京市郊外の草場地にある三影堂撮影芸術中心はラージサイズの銀塩写真の価値を大切にし、そうした設備を持った世界でも稀な施設である。私は2009年4月に同センターのディレクターであるインリ氏、ロンロン氏から銀塩写真でラージサイズを制作する助言をいただいた。そして2010年5月から3ヶ月間同センターに滞在し、ラージサイズによる「our face」作品の制作をすることにした。印画紙のサイズは、横142cm×縦178cm。今回制作、展示する「our face」は、日本的な手工芸的手法とラージサイズという中国的美術スタイルの融合と言える。

毎朝9時にベテラン暗室マンのズーファンさんと2人のアシスタントが来る。午前中はテストプリントをする。小さい印画紙でネガ1枚ごとの露光時間とコントラスト、壁面までの距離のテストを繰り返す。昼食の後、本番の印画紙に露光する。アルミ板で作った特製イーゼルに印画紙を貼るだけでも一仕事だ。それを暗幕で隙間なく包む。次にネガを引き延ばし機にセットし壁面に投影する。イーゼルの上に施したマーキング位置と両目が重なるように、重さ20kg以上あるイーゼルを3人掛かりでミリ単位で調整する。大きさを変えるため、毎回引き延ばし機を前後させるのも3人掛かりだ。位置が整うと、レンズの絞りをあわせ、暗幕を丁寧に剥がして露光する。終わるとまた暗幕で包む。これを暗闇の中で延々繰り返す。

思えば途方もないプリント作業である。本当に出来上がるかどうかも心配だった。誤差はどのくらいか、温度や湿度による印画紙や暗幕の伸縮等々。気になる要素は山ほどあり、実際に失敗の連続だった。制作を始めて2週間目に、舞妓さんの肖像が出来上がった。その時はロンロンさんを始め、三影堂の全員が暗室に集まってきた。まだ濡れた印画紙を前にみんな少し興奮気味。生涯忘れないと思う。

技術的なことを考えると恐らく世界のいま、ここでしか、これまでもそしてこれからも作れない作品だと思う。大きいから、粒子がくっきり見えるゼラチンシルバーの中に、これまで僕が会って来た無数の人の痕跡が断片となって見え隠れしている。

写真を続けていてよかった。

本プロジェクトには日本のポーラ美術振興財団ならびに国際交流基金から助成をいただいた。
心より御礼申し上げる。

北京市草場地にて。2010年5月31日 北野謙

投稿者 町口覚 : 14:01

2010年12月19日

ほんじょびトーク

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こんな感じで写真集を見る子供たちがいっぱい!のパリフォトから帰ってきてから仕事しまくりの日々。
で、今年も残すところあと二週間。

先日の幅くんとのトークの模様がウェブサイトにアップされたんで是非ご覧下さいませ。

投稿者 町口覚 : 04:41

2010年11月26日

PARIS PHOTO 2010

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パリフォト
社交と販売の凄まじい五日間が終わった。
三年連続の出展。
こっちの働きかけた姿勢に対する確かな世界の反応を身体で感じる事が出来た。
来年は、亜細亜に(も)働きかけようと思ってます。

明後日の日曜日。
宝塚メディア図書館で、写真家の石内都さんと話します。
パリフォトで先行販売したも行商しようと思ってますので、是非御来場くださーい。

投稿者 町口覚 : 02:42

2010年11月14日

パックマン

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11R 終了のゴング
ここでね、止めるか? 行かせるか?
っていう、セコンドの判断というのはね、かつてマニラのスリラーで、エディ・ファッチトレーナーが、ジョー・フレイジャーを止めたでしょ。これ以上行ったって勝てない、もう消耗しきってるって。あれと同じですよ。
ただね、ファイターっていうのはね、試合を自分で放棄したくないんですよ。

12R 開始のゴング
だって、男の誇りを賭けて闘ってんですから。
闘う以上は、まだ勝つチャンスがあるわけですよ、マルガリートにはね。

以上、ジョーさん(サイト内の “ジョー小泉のひとりごと” はヤバいっすよ)の実況生中継の解説の一部。

12年前、フライ級の世界チャンピオンだった。
12年間、身体をつくりつづけてきた男が今日、スーパーウェルター級の世界チャンピオンになった。
六階級制覇を成し遂げたフィリピン(アジア)の英雄 “エマヌエル・ダピドゥラン・パッキャオ” に歓喜し、脱帽し、勇気をいただいた。

俺っちは、明日から、社交しながら勝負しにパリフォトに行ってきま〜す!

投稿者 町口覚 : 17:00

2010年11月08日

ポスターを貼って生きてきた。

明後日の水曜日。
渋谷のポスターハリスギャラリーで、ウルトラポスターハリスターの笹目浩之さん、編集者の藤本真佐夫さんと話します。昔、俺っちがつくった(「あゝ、荒野」写真・森山大道、短歌・寺山修司、音楽・阿部薫の)スライドも上映しまっす。戦後の復興から大阪万博に向かって急成長した時代の(下記)ポスターも展示しています。

・河野鷹思「Picnic」(1955)
・氏原忠夫「三人姉妹」(1956)
・粟津潔「ネクラソフ」(1956)
・山城隆一/粟津潔「国定忠治」(1958)
・宇野亜喜良「読書週間」(1959)
・山城隆一/永井一正「日本のデザイン展望」(1960)
・宇野亜喜良「越路吹雪リサイタル」(1965)
・横尾忠則「終りの美学」(1966)
・早川良雄「第五回東京国際版画ビエンナーレ展一九六六」(1966)
・田中一光「人形浄瑠璃・文学」(1966)
・横尾忠則「ジョン・シルバー 新宿恋しや夜鳴篇」(1967)
・横尾忠則「天井桟敷定期会員募集」(1967)
・杉浦康平「長岡現代美術館賞展」(1967)
・長友啓典/加納典明「ジャンセン」(1967)
・宇野亜喜良「星の王子さま」(1968)
・宇野亜喜良「新宿版千一夜物語」(1968)
・串田光弘「ヴェト・ロック」(1968)
・杉浦康平「ORCHESTRAL SPACE ’68」(1968)
・灘本唯人「MARIE」(1968)
・福田繁雄/操上和美「EXPO ’70」(1968)
・伊坂芳太良「WINDOW.5」(1969)
・粟津潔「犬神」(1969)
・横尾忠則「椿説弓張月」(1969)
・赤瀬川原平「少女都市」(1969)

是非御来場くださいませ。

投稿者 町口覚 : 19:36